はじめに

こんにちは!月3冊以上本を読むほど読書大好きマイマイです
今回は『ただ、それだけでよかったんです』(著者 松村涼哉)を読んで、詳しくレビューしていきたいと思います。
といった方にはぜひ、最後まで見て行っていただけたら幸いです。
作品情報
著者
著者は【松村涼哉】(まつむら りょうや)さんです。
松村涼哉さんは現代の人間関係や社会問題を鋭く描く小説家です。
代表作は『15歳のテロリスト』
2015年に『ただ、それだけで良かったんです』で電撃小説大賞で大賞を受賞。
同作を改稿・改題した『ただ、それだけでよかったんです』で、大学在学中に作家デビューしました。
出版社
- 【完全版】メディアワークス文庫 (2023年12月)
- 【初版】電撃書籍 (2016年2月)
私は完全版を購入しました。
ページ数
【完全版】『ただ、それだけでよかったんです』のページ数は284ページです。
ちょっとでも読書に慣れている方ならすぐ読み終えられるくらいのボリュームで非常に手軽ですね。
展開も早く退屈しない作品なので、かなり気楽に楽しめる作品だと思います。
あらすじ(ネタバレなし)
ある中学校で、一人の男子生徒が突然自らこの世を去った。
残されたのは、「菅原拓は悪魔です。誰も彼の言葉を信じてはいけない」という一文だけが書かれた遺書。
その名前を見た人々は驚いた。菅原拓は、どこにでもいるような静かな生徒で、特に目立つ存在ではなかったからだ。
しかし、遺書をきっかけに、学校の空気は少しずつ変わっていく。
「誰が悪いのか」「本当にそうだったのか」クラスの生徒たちの間に、見えない線が引かれはじめた。
亡くなった生徒の姉・香苗は、弟の死を受け入れられず、真実を探し求めて歩き出す。
“人間力テスト”という制度のもとで、他人を評価し合う環境が、彼らの関係をゆっくりと歪ませていく。
カースト最上位の優等生と、カースト最底辺の少年。
その関係は、誰かひとりが悪いとは言い切れない、複雑で痛ましい心のすれ違いだった。
作品のテーマ
この作品のテーマは、単なる「いじめ」ではなく、クラス内カーストそのものだと思います。
もちろん作中にはいじめの描写も登場しますが、それはカースト最底辺である拓が目指した「革命」の手段として描かれています。
クラスの中で行われる順位付けは、一人ひとりに「役割」や「期待される姿」を押しつけ、その枠から外れることを許さない。
その中で生まれる息苦しさや孤独が、物語の中で非常に鮮明に表現されています。
人間力テストとはなんだったのか
人間力テストを作り出した藤本校長は、こう言います。
「人は他人の評価から逃げられない。」
この言葉こそが、物語の核であり、本質です。
人間力テストが存在しない現実であっても、私たちは常に誰かに評価され、同時に他人を評価しています。
この制度は、そうした人間関係の構造を誇張し、評価し合う社会の問題を大きく映し出すレンズとして機能していました。
読み終えての感想
他人とわかり合いたい、「ただ、それだけ」がうまくいかないことは、人生には往々にしてあります。
筆者である自分も多くの失敗を重ねてきたので、主人公に共感する部分が少なくありませんでした。
松村涼哉さんの作品は、いじめや家庭環境といった人間関係の軋みを、鮮やかに、そして容赦なく描き出すものが多いです。
その中で描かれる「分かり合えないもどかしさ」や「集団に潜む加害の欲望」は、とても生々しく、時に目を背けたくなるほどです。
人は時に“クズ”を演じ、時に“いい人”を演じながら、自分の利己的な欲求をどう満たすかを模索して生きている。
この作品には、その永遠のテーマに対する、一つの選択肢が提示されているように感じました。
この小説がおすすめの人
この作品は、他人とのかかわりに悩んでいる方におすすめしたいです。
人間関係は、中高生でも大学生でも、そして社会人になってからも、決して避けて通れないもの。
「なりたい自分」と「周囲の期待」のあいだで揺れる人にとって、この物語はきっと心に響くと思います。
「誰かと分かり合いたい」と願うすべての人に、静かに寄り添ってくれる一冊です。
まとめ・レーダーグラフで評価!

『ただ、それだけでよかったんです』は、ページ数が少なく、展開も早いため、とても読みやすい作品でした。
テーマ性が深く、リアルで陰鬱な加害欲求や、互いに評価し合う人間関係を誇張した”人間力テスト”の描写には、強い印象を受けました。
ラストは読者の解釈に委ねられており、読み終えたあとには静かな余韻に長く浸ることができました。

とても良い作品なので気になった方はぜひ手に取って読んでみてください!
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